新年のご挨拶

令和5年1月1日

謹みて新春のお慶びを申し上げます。本年が日本とジブチの皆様にとって良い一年でありますよう心よりお祈り申し上げます。

年頭に当たり、昨年一年間の日・ジブチ関係を顧み、本年の抱負を申し述べたいと存じます。

令和4年のジブチは、エチオピアでの紛争とコロナ禍の影響を受けつつ幕を開けました。ジブチは、アフリカの内陸大国エチオピアの輸出入にとって唯一と言っても過言でない海の玄関口となっていることから、ジブチ経済はエチオピア情勢に容易に左右されます。既にコロナ禍の影響を受けていたジブチ経済は、エチオピア国内紛争により大きな打撃を受けることとなりました。そこへウクライナ戦争が生起し、インフレの懸念が生じたため、ジブチ政府は財政措置を講じ、それがかなりの負担になるという困難な年となりました。

そのような中での朗報は、春過ぎにはコロナも収束し、生活様式もウィズコロナの態勢に入ったことです。5月には、2年ぶりの政務出張となった中曽根康隆防衛大臣政務官の訪問に合わせ、延期されていた自衛隊活動拠点創設10周年記念式典も実施されました。折から当地訪問中であった、陸上自衛隊中央音楽隊派遣隊による市内各所と駐留各国軍に対する演奏会は、コロナ収束を祝するが如く、明るく、雄々しく凜々しい日本の姿をジブチ国民に示してくれました。自衛隊の関連では、5月に日本国練習艦隊が6年ぶりに当地を訪問し、明日を担う若き「海軍士官」達にジブチを経験してもらうとともに、ジブチ海軍との間で初の洋上での訓練を実施しました。

ジブチへの経済協力分野では、4月には、青森で建造された新大型フェリーが到着。5月には、市内ナシブ地区で3,000人規模の小・中学校建設の起工式を実施。9月には、ジブチがソマリア和平のために10年に亘り兵力を派遣し続けるアフリカ連合主導PKOのATMISへの派遣前訓練を実施しているマルヤマ演習場へ医療機材を供与。10月には、災害対処能力向上のためジブチ陸軍工兵隊に建設重機を供与する交換公文への署名を実施。後者2件は、我が国政府が、初めてジブチの国軍への支援を通じてジブチの安定に寄与したという点で、これまでにない安全保障面での新たな協力の一ページを開いたエポックメイキングな案件となりました。

日本国内では、7月8日に安倍晋三元総理が暗殺されるという痛ましいテロが生起しました。ジブチの多くの友人の皆様からは、「世界的に偉大な指導者を亡くしたことへの深い悲しみと丁重な弔意」を表明いただき、あらためて友邦ジブチとの連帯感の強さを認識した年ともなりました。

さて、新年に向けてです。昨年末にエチオピアでの停戦交渉が成立し、予断は許さないものの、安定に向けた道筋がつき始めました。対外債務がジブチへの大きな負担となってのしかかっていますが、各種資料は5%台の経済成長を予測し、経済回復への期待も見えています。

日本の支援により昨年着工したナシブ中等学校が新教育年度から教育を始動します。1995年に建設したフクザワ中学校とともに、日本が建設する学校から多くの有為な若者が巣立ってくれることを期待します。コロナで遅れていた港湾工事が完了し、新大型フェリーがジブチ市とタジュラ市を結ぶこととなり、夏の季節風ハムシンの期間も中断することなくジブチの国内輸送に大きく寄与することになるでしょう。

コロナ収束を受けて、JICA協力隊員が戻ってきれくれています。コロナ禍以前、ジブチでの隊員の活躍は、草の根レベルで目に見える日本のプレゼンスを発揮してくれていたので、彼女等の帰還は実に頼もしい限りです。自衛隊も徐々に地元との関係強化のための活動を再興しつつあります。困難の多い環境下ですが、市民に最も近く、顔の見える最前線の「外交戦士」としての彼等、彼女等の活躍が大いに期待されます。

日・ジブチの安全保障分野での協力の新たなページが開かれつつある中で、ジブチ政府からは、海賊対処活動を超えた様々な分野での自衛隊の協力への期待が繰り返し表明されています。防衛分野での協力深化も大いに期待するところです。

昨年末に策定された「国家安全保障戦略」において、「ジブチ政府の理解を得つつ、在外邦人等の保護に当たっても、海賊対処のために運営されているジブチにある自衛隊の活動拠点を活用していく」旨が謳われました。昨年のエチオピア紛争を踏まえ、今後、ジブチ自衛隊拠点がどのように活用されるかが期待されます。

また、同戦略では、「同志国との安全保障上の協力を深化させるために、開発途上国の経済社会開発等を目的としたODAとは別に、同志国の安全保障上の能力・抑止力の向上を目的として、同志国に対して、装備品・物資の提供やインフラの整備等を行う、軍等が裨益者となる新たな協力の枠組みを設ける。これは、総合的な防衛体制の強化のための取組の一つである」旨も記載されました。「自由で開かれたインド太平洋」の西端に位置する友好国ジブチとの新たな協力を模索することで、我が国の防衛体制強化がいかに図られるかも注目されることとなるでしょう。

ジブチを含む「アフリカの角」地域は、近年、熱波と旱魃に見舞われ、食糧難も際だっています。年初からは、ジブチに日本から国連世界食糧計画を通じての大型食料援助が入ることとなり、国内の安定に寄与することになるでしょう。世界の海運の大動脈であるバベルマンデブ海峡を扼するジブチは、「アフリカの角」地域で唯一、平和と安定を享受している国です。この国の安定は、地域の平和に直結するのみならず、世界経済の動向をも左右することとなります。海賊件数は激減していますが、それは海賊活動が「なくなった」のではなく、各国軍による抑止が機能して見え「なくなった」だけのことであり、海賊問題の根源である周辺地域のガバナンスは回復していません。自衛隊はじめ、各国軍の活躍が引き続き期待されるところです。

ジブチ共和国独立以来、ジブチの友人と手を携えてきた日本は、アフリカへのゲートウェイたる友邦ジブチの平和と安定のために、引き続き対等なパートナーとしての協力を惜しみません。わたくしは、その先頭に立って本年も「日の丸を振り続ける」所存です。次のご報告で更に明るい内容をお伝えできることを祈念しつつ、本年も一層のご指導、ご鞭撻をお願い申し上げる次第です。