天皇誕生日に寄せた日ジブチ関係に関するLa Nationへの寄稿

令和7年4月30日
原大使
フェリー式典
ニトベ学校
2025年2月23日の天皇誕生日に寄せて、原大使は、日ジブチ関係に関するLa Nationへの寄稿を行いました。内容は以下のとおりです。
 
  1. アジアとヨーロッパを結ぶ海上航路の十字路に位置するジブチは、アフリカ内陸部への物資供給の重要な役割を担う戦略的な地位を占めています。さらに、不安定、貧困、気候変動など多くの世界的な課題に直面するアフリカの角地域において、ジブチはその安定性と、地域の平和と安定を維持するために重要な役割を担っているという点で際立っています。唯一無二の戦略的なアクターであるジブチがその役割を十分に果たすためには、紅海とアデン湾における海洋安全保障の確保が不可欠です。この点において、ジブチは「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた日本にとってのパートナーであることは自然であり、日本はジブチの持続可能な発展を支援し、地域的・国際的な安全保障の確保に向けてジブチと緊密に協力していく所存です。
 
  1. ジブチの持続可能な発展のため、日本は様々な分野で支援を行っており、特に持続可能性と強靭性に焦点を当てた質の高いインフラ整備を行っています。最近の主要プロジェクトには、北部地域とジブチ市内間の移動を容易にする新しいフェリーの供与や、洪水時にも安全な交通を確保しつつ渋滞を緩和するパルマレ橋の建設などがあります。これら2つの画期的なプロジェクトは、地域の連結性を強化し、人と物資の流れを促進します。
 
  1. しかし、人材への投資なくして持続可能な開発は達成できません。日本は基礎教育の質の向上に特に力を入れています。日本の元教育者の名前を冠したフクザワ中学校とニトベ基礎学校は、日本の支援により建設され、ジブチの子どもたちに質の高い学習環境を提供し、彼らの心身の発達を促しています。これらの学校に通うジブチの若者たちが、将来ジブチの発展の担い手となることを願っています。さらに、このようなコミットメントは、今年ジブチでの活動25周年を迎えるJICA海外協力隊の活動にも表れています。我々は、ジブチの学校での教育、職業訓練、地域開発など様々な分野でジブチの人々に寄り添っている日本のボランティア達を誇りに思います。
 
  1. 同時に、ジブチの持続可能な発展のためには、地域の安定化も忘れてはなりません。FOIPのビジョンに沿い、日本はジブチの海洋安全保障への取組を支援してきました。特に、ジブチ沿岸警備隊に対しては、その発足以来、2隻の新型35M級巡視艇を含む機材供与、長期にわたる技術指導等の支援を行ってきました。加えて、日本は地域内の各国機関の海洋安全保障能力を構築するための地域海洋訓練センター(DRTC)の整備や、同センターにおける海事法適用に関する地域訓練コースの開催を支援しています。さらに2009年以降、日本の自衛隊はアデン湾における海賊対処活動に積極的に関与し、国際航路の安全確保に貢献しています。
 
  1. こうした努力を補完する民間投資は、持続可能な開発の重要な原動力です。昨年、多くの日本の民間企業で構成される日本・ジブチ友好協会代表団がジブチを訪問し、ビジネスチャンスの模索を含む協力関係の強化を図りました。また、新たなビジネスチャンスの獲得を目指し、多くの日本企業がジブチの現状を把握するために来訪しています。今年、ジブチは4月から開催される「2025年大阪・関西万博」に参加します。世界中から技術や知識が集まるこの国際的なイベントは、イノベーションの触媒となり、新たなビジネスや経済交流の強化のための素晴らしい機会を提供するでしょう。このようなダイナミズムが、日本とジブチの経済関係の強化に貢献し、将来の投資を促すことを期待しています。
 
  1. 日本とジブチの関係においては、政治的・経済的な交流に加え、文化的・人的・学術的な交流も深まっています。アニメや漫画、ビデオゲームなどの日本のポップカルチャーの人気のおかげで、日本への関心や日本語学習への意欲は、特にジブチの若者の間で高まり続けています。JICA海外協力隊による日本語教育や日本文化の普及が、ジブチ国民の日本に対する理解を深める一助となることを期待しています。
 
  1. 一方、日本のことわざに「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、ジブチでは日本文化への関心が高まっているものの、その理解のためには経験に勝るものはありません。今年、ジブチは日本政府が主催する「世界青年の船」事業(SWY)に初めて参加しました。また、JICA研修の一環として多くのジブチの若者が日本を訪れ、日本政府の奨学生としてジブチの若者が日本の大学で勉強を続けています。このような経験を通じて、彼らが日本や日本人に対する理解を深めるだけでなく、帰国後、身につけた技術や知識をジブチの機関において有効に活用し、両国の架け橋となってくれることを願っています。さらに、両国間の学術交流も発展しており、知識の移転が促進されています。例えば、東京農業大学は30年以上にわたってジブチで研究活動を行っています。このような協力関係は、ジブチ大学との共同研究や研究者・学生間の交流という形で現れており、持続可能な開発のための科学的進歩に貢献しています。
 
  1. 二国間関係にとどまらず、ジブチは国際協力や地域的・世界的課題の解決においても日本の重要なパートナーです。
 
  1. 日本は、国連やアフリカ連合(AU)と協力してアフリカの角地域の紛争解決に積極的に取り組んでいるIGAD議長国(2025年4月現在)としてのジブチのコミットメントを高く評価しています。ジブチの努力を補完するため、日本は、女性の参加及びリーダーシップ強化を通じて平和と安定の維持を促進することを目的としたIGADのイニシアティブを支援しています。
 
  1. さらに、平和構築は陸上の安全保障だけに依存するものではなく、紅海とアデン湾は世界の重要な航路であることから、海上安全保障の強化も平和構築のためには必要です。この分野における両国の協力は、全ての者にとっての公共財である航行の自由を守ることに役立ちます。
 
  1. アフリカの繁栄と安定は、日本にとって長い間優先事項であり、1993年のアフリカ開発会議(TICAD)の立ち上げ以来、日本は積極的に関与してきました。今年8月には、第9回目となるTICAD9が横浜で開催されます。アフリカ自身の開発努力を支援するという基本理念に忠実に、TICAD9は、気候変動、保健、教育、食糧安全保障、海洋安全保障、紛争解決など、今日の世界的な課題に対する革新的な解決策を探ることを目指します。第1回目のTICADから積極的に参加しているジブチは日本にとって重要なパートナーであり、日本はジブチや他のパートナーとの緊密な協力の下、今回のTICADの成功に向けて全力を尽くします。
 
  1. 日本とジブチは、相互信頼に基づく友好、尊敬、協力の二国間関係の深化と拡大に尽力するパートナーであるだけでなく、地域的・国際的課題に共に取り組む重要なプレーヤーでもあります。2025年は日・ジブチ外交関係樹立47周年にあたり、日本はジブチの人々及び政府と手を携えて、既に実りあるこのパートナーシップを更に強化する努力を続けていきます。