La Nationへの大使寄稿 「『進化したFOIP』と日本とジブチの新しいパートナーシップ」

令和8年6月23日
ゲレ大統領と大西外務大臣政務官
ニトベでの文化イベント
パルマレ道路橋梁完成イメージ
2026年6月15日、大河内大使は、「『進化したFOIP』と日本とジブチの新しいパートナーシップ」と題するLa Nationへの寄稿を行いました。内容は以下のとおりです。
 
1 ジブチは、アジアとヨーロッパを結ぶ海上航路の十字路であるバブ・エル・マンデブ海峡に面し、世界の海運を支える重要な役割を果たしています。また、アフリカの角地域において希有な平和と安定を保ち、IGADの議長国としても外交力を発揮してきました。日本は、このようなジブチの戦略的重要性と国際社会への貢献を高く評価しています。そして、日本の提唱する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向け、ジブチがこれまで果たしてきた重要な役割に、深い感謝の意を表したいと思います。
 
2 日本はFOIP誕生から10年を迎える本年5月に、FOIPの基本理念を維持しつつ「進化した」FOIPビジョンを発表しました。海洋安全保障や法の支配の重要性について認識を共有するジブチが、引き続きFOIPの価値に賛同し、国際社会共通の目的に向かって、これまで同様重要な役割を果たしていかれることを期待しています。

3 直近のゲレ大統領就任式には大西外務大臣政務官が出席するとともに、ディレイタ国民議会議長、オマール外相等と面談を行い、今後の二国間関係強化の可能性について議論しました。これは、ゲレ大統領の6期目において、継続性と革新の精神をもって、日ジブチ間の協力関係に新たな推進力を与えたいという我々の意思を示すものです。

4 本稿では、これまでの日ジブチ関係の歩みを振り返ると共に、日ジブチ関係の発展の展望を「進化したFOIP」の視点から述べたいと思います。

5 持続的な経済的繁栄
(1)日本は、FOIPの一つの柱である持続的な経済的繁栄を共に追求するため、まずは連結性の強化を重視しています。ジブチでも持続可能で強靱な質の高いインフラ整備を行ってきました。1990年代のシエスタ通りの整備に始まり、近年ではエチオピアとジブチを結ぶ国道一号線の整備、北部地域とジブチ市間の移動を容易にするフェリーの供与等を行いました。来年には、洪水時の安全な交通を確保しつつ渋滞を緩和する一大プロジェクトであるパルマレ道路橋梁が完成予定です。これらのプロジェクトが、人と物流のハブとして発展を続けるジブチの更なる経済発展に貢献することを期待しています。
(2)人材への投資も持続的な経済発展に不可欠です。基礎教育の分野では、日本の近代教育の礎を築いた教育者の名前を冠したフクザワ中学校と新渡戸稲造基礎教育学校が、将来ジブチの発展の担い手となる子どもたちに質の高い学習環境を提供しています。また、医療現場への日本式のアプローチ「5S-KAIZEN-TQM」導入を始め、各分野への専門家派遣による職場環境の改善と業務効率化に取り組んでいます。
(3)地域社会に寄り添った支援も日本の開発協力の特色です。26年に亘るJICA海外協力隊の活動に加え、UNICEFとの連携による北部地域における給水設備の整備、そして、毎年地域の団体による教育、医療、女性のエンパワーメントといった開発事業も支援(草の根無償)してきており、人々の暮らしに寄り添う支援を続けています。

6 安全保障協力
(1)中東情勢の緊迫化する中で、国際パートナーと連携し、バブ・エル・マンデブ海峡を日夜警備しているジブチ沿岸警備隊やジブチ海軍、そして世界の航行の自由を擁護すべく国際場裡で働きかけを続けているジブチ政府の姿勢に、同じく海洋国家である日本は深い敬意を表します。
(2)FOIPの第三の柱である「平和と安定の確保」に向け、日本は、長年にわたり海洋安全保障の分野でジブチを支援してきました。ジブチ沿岸警備隊の発足以来、昨年供与した2隻の新型35M級を含む計5隻の巡視艇及び機材供与、技術指導等を行うと共に、地域海洋訓練センター(DRTC)の整備等も通じて、地域全体の能力向上にも貢献してきました。
(3)そして「進化したFOIP」の下、日本は新たな協力にも取り組んでいます。ジブチは2024年に日本のOSA(政府安全保障能力強化)のアフリカ初の対象国となり、ジブチ海軍に対する海洋状況把握(MDA)能力向上に資する沿岸監視レーダーシステムの供与に向けた準備を進めています。
(4)これに加え、自衛隊は2009年からジブチ軍や他国軍隊と連携しつつアデン湾・ソマリア沖における海賊対処行動に従事してきました。2011年に開設されたジブチの自衛隊活動拠点は本年で開設15周年を迎えました。これは、日本とジブチの信頼関係が、地域の平和と安定、そして国際海運の安全確保に貢献してきたことを示しています。(5)日本は、航行の自由と世界のサプライチェーンの安全確保のために、ジブチと共に緊密な協力を継続できることを喜ばしく思います。

7 人と人とのつながり
(1)開発協力と安全保障協力に加えて、文化交流、人的交流、民間経済交流の発展といった多様な分野において、二国間関係の一層の発展の芽吹きがみられます。
(2)アニメや漫画、ビデオゲームなどの日本のポップカルチャーの人気のおかげで、日本への関心や日本語学習への意欲は、特にジブチの若者の間で高まり続けています。このような関心に応えられるよう、大使館としても引き続き日本文化イベントを毎年開催して、文化交流の更なる促進に努めていきます。これらの取組を通じて、幅広い分野での相互理解の深化が期待されます。
(3)相互理解を進めるに当たっては様々な人的交流も重要です。ディレイタ国民議会議長や中谷前防衛大臣を始めとするハイレベル往来に加えて、毎年ジブチ人学生を日本に国費留学生としてお迎えしているほか、JICAの下での様々な研修・交流のスキームを通じて、将来のジブチを担う若者の人材育成を支援しています。
(4)民間セクターでも、アフリカ市場のゲートウェイとなり得るジブチとの間で新たな動きが生まれつつあります。本年2月には、日本企業を招いたビジネス・ツアーを実施し、港湾や病院施設の視察やジブチ企業との交流の機会を設けました。また、天皇誕生日レセプションでは日本企業が技術や製品を紹介し、新たなビジネス協力の可能性を探りました。今後は、開発協力や安全保障に加えて、民間投資やイノベーションが日ジブチ関係の新たな柱となることを強く期待しています。

8 このように、日ジブチ関係は長年にわたり築かれた信頼を基に、多面的な協力関係を発展させてきました。2028年には両国は外交関係樹立50周年という大きな節目を迎えます。国際社会の不確実性が増す今日だからこそ、責任あるパートナーである日本とジブチが協力し、地域と世界の平和と安定、繁栄に向けてより大きな役割を果たすことが期待されています。

9 「進化したFOIP」の下で、日本は今後もジブチと共に歩み、より強固なパートナーシップを築いていきたいと考えています。そして、両国の協力が次の50年に向けて更なる高みに発展していくことを心から期待しています。
 
(上部の掲載写真は、左から2026年5月のゲレ大統領と大西外務大臣政務官の会談(ゲレ大統領就任式後)、2025年にニトベ基礎教育学校で開催された日本文化イベントの様子、パルマレ道路橋梁の完成イメージ図。)